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2011年5月 8日 (日)

花樹名の語源・由来を集録・・「ヒサカキ属」

  「ヒサカキ属」

 ◎「緋榊」を名前の語源とする私の新説

 つばき科のヒサカキ属は、ヒサカキ・ハマヒサカキ・ヒメヒサカキである。葉に鋸歯があり、開花時に特異な香りを放つので、鋸歯が無く葉の形・質や花形も異なり匂いも出さないサカキは、区別して「サカキ属」とされている。前年に、新説で「緋榊」・「浜緋榊」を名前とする事を発表した。再度述べて確定付けたい。

 ◎旧説に対する反論

 曾(コウ。考の古字)「国史草木昆虫」(1821)の真(マ)サキに対する「非サカキ」説と、牧野富太郎「原色牧野植物大図鑑」(1961)の小さい榊であり姫字を当て、姫榊のメ音を略し転じた「ヒサカキ」説とが、由来説の二大主流を成して来た。

 サカキではないと命名する「非榊」説は、語法的に相応しない。非の語は、非常・非認識などのように、漢語を否定するものである。榊は、国字の和語なので、理に合わないのである。

 姫字を当てて姫榊を略音転訛で「ヒ榊」とする節は、妥当でない。屋久島産に「姫ヒサカキ」という品種があるので、姫姫榊をヒヒメサカキと言うことになり、意味が成り立たない。懸崖の盆栽にして、枝振りと小さな葉の姿が美しい「姫浜ヒサカキ」という品種もある。これは、姫浜姫榊の略語ではない。物の名前で、姫字を略して呼ぶのは、全く無い。例えば植物名で、姫ツゲをヒツゲとか、姫ウコギをヒウコギなどと言わないのと同じであり、姫榊の語源説は不合理である。

 旧説には他に、サカキに似る「比サカキ」説・「低サカキ」の転訛説・{似サカキ」の転訛説・「実(ミ)サカキ」の転訛説などがある。いずれも、こじ付けの付会説であるに過ぎない。以上の学者による旧説を、すべて否定する。

 ◎新説の論証

 四、五月、ヒサカキ属の雌株の新芽が赤色を呈する現象に着眼して観察した。その赤い芽は、朱・赤・赤褐色・紫赤褐色・茶褐色と、ある期間を経て変化して行く。昔は、アケ(緋色)がアカやシュと同義語で、緋色は、本緋・浅緋(アサキヒ)・濃緋(コキヒ)と、明度による濃淡の色合いを含んでいた。ヒサカキ属の新芽の色の変化も、これらの色合いを総合したような様相を示すのを確認できた。

 榊の新芽も赤茶色で緋色に類するが、枝先にまばらに見え、緑色の葉が多くを占め、緑葉化するのも早い。ヒサカキ属の新芽の赤い葉色は、多くの枝先に密に現れ、広がりと緋色の明暗の継続の特徴を有している。

Hisahamagosei  画像の左、ヒサカキの新芽。右、ハマヒサカキの新芽。4月13日、宮崎県立総合文化公園内の植え込みと低垣で撮影。密集的に緋色の広がりを示している。

Sakakisinme この画像は、サカキの鎌状の芽と赤い新芽。緑葉が量的に多くを占めている。

Hisasakasinba 画像の左は、暗色化しているが、4月初めの新芽の緋色と広がりの面影が残る若葉の「ヒサカキ」。右は、若葉・青葉に変わる前で、淡い茶色の若芽が枝先に見える「サカキ」。・・・宮崎神宮の境内にて、5月10日、両種ともに撮影。

およそ一ヶ月経た時の両種の葉色の相違を見ても、「緋榊」と名づけた由来と語源の説に確信が持てる。

Natu8hisahamaren_5  真夏の8月20日、サカキ属の頂葉の新芽の葉色・・・・・左の2枚は、緋サカキ。右の2枚は、ハマ緋サカキ。いずれも、浅緋(アサキヒ)や深緋(フカキヒ)の色相を呈し、やはり、夏の間も緋色系を受け継いで変化しているではないか。 

 宮崎神宮境内には、緋榊の植え込みが大多数で、浜緋榊もおみくじの結び用に一株植えてあり、榊はわずか二株だけである事が判明した。なお、地方では、神前のほか、墓・仏壇にも用いられている。

 ついでに、書き加えると、戦前に「火榊」説というのがあった。その著書「日本語源」の中に、「火桜も赤と言う。赤色に火何というもの多し」とある。これの火桜とは、緋桜の名の言い誤りであり、火榊と論じて緋色の葉、新芽に気づいていないのは、惜しまれる。

 要するに、ヒサカキ属の赤い新芽に基づき、緋色を語源とする「緋榊・浜緋榊・姫緋榊」の新名称を設定した次第である。たぶん、古人も緋色に変化する新芽に感動して、緋榊・浜緋榊などの呼び名にした事であろう。緋榊の呼称発生の根源を推測すると、「万葉集代匠記」(1690)に、サカキに似る「比サカキ」説を出した僧契沖の元禄時代よりも昔で、南国暖地で新芽の緋色の持続の様子を見た人々の間ではないかと思われる。

 ◎「緋榊」の名称認識の現状

 前年に新説発表後、一部分ながら、園芸業者や有識者の間で、「緋榊」の用語が使用され、広まりつつあるのは喜ばしい。Web上で検索した結果の実例を挙げると、アートクリエイト・プルメリアガーデンのホームページに、「サカキを神棚榊、ヒサカキを緋榊」と記している。Seesaaブログには、「最近では店頭の神棚用の榊は、中国で栽培の物を輸入した榊や緋榊がほとんどです」とある。日本語でおK・ネットのHPからリンクする掲示板に、{本榊と緋榊の境界はどこ?」・「緋榊の北限は福島県らしいで!」と記している。わだかつ社のHPには、{近年、榊や緋榊が定着しています。緋榊は、お仏壇に用いられ、関東以北では榊の代わりに用いる」とある。なお、浜緋榊も南国の海岸付近で、神前や墓・仏壇に供える所もある。

 ◎結語

 ここに、学者による旧説を全面的に否定し、名前の由来に関する論拠により、「緋榊」を語源とするヒサカキ属の「緋榊」・「浜緋榊」・「姫緋榊」という固有名詞に改め、広く流布する事を祈り、新説を強く提唱する者である。

 

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